新NISAで買えない商品は、制度側がすでに弾いている
新NISAで買えない商品は、制度側がすでに弾いている
金融庁の363本と、届出で作られる成長投資枠リストの違いを数字で追う
「新NISAで買ってはいけない商品」という記事をよく見かける。上位に並ぶのは毎月分配型、信託期間の短いテーマ型、レバレッジ型あたりだ。
この三つは、NISA口座では買えない。制度の側で除外されている。
日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2025年9月)のQ4は、成長投資枠の除外をこう書いている。①監理銘柄・整理銘柄に指定されている株式、②信託期間が20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等。公社債と公社債投資信託も受け入れられない。Q5によれば、預金・国債・社債は、つみたて投資枠でも成長投資枠でも対象外である。
避けろと言われる商品の多くが、ここで消える。個人向け国債も消える。
では、何が残るのか。数字を追った。
1. 判定材料は運用成績ではなく、約款に何と書いてあるかだ
同じQ4は、つみたて投資枠の要件をこう説明する。委託者指図型投資信託約款において、①信託契約期間が無期限または20年以上であること、②ヘッジ等の一定の場合を除きデリバティブ取引による運用を行わないこと、③毎月分配型でないこと。加えて、連動対象とする指数や手数料の水準について、内閣府告示で定める要件に該当するものに限られる。
判定材料は約款の文言である。運用成績でも、テーマの流行り廃りでもない。
だから「毎月分配型は避けよう」という助言は、NISA口座の中では空振りする。買おうとしても受け入れられないからだ。
引っかかったのは、外れた後の扱いが二つの枠で正反対になることだった。Q70によれば、つみたて投資枠に受け入れた投信の約款が変更され、対象商品に該当しなくなった場合、その投信は変更の効力発生日に特定口座か一般口座へ払い出される。非課税の器から追い出される。一方Q72は、成長投資枠に受け入れた上場株式が監理銘柄・整理銘柄に指定されて対象から外れても、引き続き成長投資枠で保有できるとする。新規に買えなくなるだけだ。資産運用業協会も、対象商品リストの注記で同じことを書いている。
つみたて投資枠は入口と出口の両方を締めている。成長投資枠は入口だけだ。
2. 363本にかかる上限は四段あり、売買手数料はゼロと決まっている
金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」(2026年8月18日時点)によれば、対象商品は363本。内訳を足し直してみた。公募投信の株式型が197本(国内66・内外36・海外95)、資産複合型が157本(国内5・内外149・海外3)、ETFが9本(国内3・海外6)。合計363本で合う。
最も多いのは内外の資産複合型149本で、全体の4割にあたる。バランス型が主流という構成である。
同資料の信託報酬率(税抜き)の平均は、投資先を国内とする指定インデックス投信で0.27%、内外・海外とするもので0.34%。法令上の上限はそれぞれ0.5%と0.75%と示されている。
ただし、この0.5%と0.75%が363本すべてにかかる上限ではない。金融庁が「NISAに関する有識者会議」(第2回、2025年4月22日)に提出した説明資料の図表3を見ると、要件は四段に分かれている。対象指数に連動するものは、国内資産0.5%以下・海外資産0.75%以下。対象指数に連動しないもの、つまりアクティブ運用は、国内資産1%以下・海外資産1.5%以下。上限が倍になる。
その代わり、連動しない側には三つのハードルが加わる。純資産額50億円以上、信託開始から5年経過、信託期間の3分の2で資金流入超。指数連動型にこの三つはない。
同じ表に、もう一段ある。売買手数料はノーロード。注記で、解約手数料と口座管理料もゼロと明記されている。金融庁が2025年12月に公表した令和8年度税制改正の資料も、つみたて投資枠における売買手数料は現状ゼロだと書いている。
信託報酬に上限があるだけではない。買うときも、解約するときも、手数料を取れない。
3. 成長投資枠の一覧は三者が別々に作り、本数は公表されていない
成長投資枠は事情が違う。
資産運用業協会は、各運用会社が税法上の要件を踏まえて対象と判断した商品の届出を受け、それを取りまとめて公表している、と自ら説明している。投資信託(非上場)の対象商品リストの最終更新は2026年8月26日、上場投資信託(ETF)・上場投資法人(REIT等)のリストは同年8月24日である。
これで全部ではなかった。同協会は、東京証券取引所に上場する内国商品現物型ETF、外国ETF、外国ETF-JDR、ETN-JDRについては同取引所が取りまとめている、と案内している。日本取引所グループが公表する「特定非課税管理勘定(NISAの成長投資枠)対象銘柄一覧」がそれだ。個別の上場株式に至っては、対象一覧そのものが作られていない。除外要件に当たらなければ買える、という消去法で決まる。
信託報酬の上限もない。
さらに、つみたて投資枠には金融庁が本数と信託報酬の分布まで載せた概要資料があるのに、成長投資枠にはそれに当たるものがない。届出のExcelが置かれているだけで、全部で何本あるのかは公表されていない。私も数えられなかった。
つまり「リストに載っている」は「安い」を意味しない。目論見書を自分で開く必要が実質的に残っているのは、ここだけだと言っていい。
4. 分配金の再投資は、その年の投資枠を同じ額だけ削る
同じQ&AのQ35に、具体的な数字の例が載っている。分配金再投資型の投資信託を80万円分買う。その年に5万円の分配金が発生して再投資される。すると、その年につみたて投資枠で受け入れられるのは残り35万円になる。120万円から80万円と5万円を引いた額だ。
再投資分も年間投資枠の利用額に加算される。見落としやすいのはここである。
元本払戻金(特別分配金)はどうか。Q21は、これを投資した元本の一部払戻しであり、そもそも課税の対象外だと説明する。NISAの非課税は効かない。Q36によれば、元本払戻金が支払われても年間投資枠の利用額は減らない。一方でQ37は、非課税保有額のほうは払い戻された分だけ減り、減った分は翌年以降に年間投資枠の範囲内で再利用できるとしている。
分配の頻度が毎月でなくても、枠は削れる。
5. 受取方式を変えていない配当は、NISA口座でも20.315%引かれる
これは商品ではなく設定の話だ。
上場株式の配当金の受取方法は三つある。配当金領収証方式、登録配当金受領口座方式(および個別銘柄指定方式)、株式数比例配分方式。Q20の一覧表によれば、NISA口座で配当金等が非課税になるのは三つ目だけである。前の二つでは20.315%が源泉徴収される。ただし売買益は、どの方式でも非課税だ。
配当が年10万円なら、差は20,315円になる。
手続きには期限もある。Q18は、3月決算銘柄であれば配当基準日である3月31日までに証券会社を通じて証券保管振替機構へ取り次ぐ必要があるとする。
Q19の注意書きも重い。この方式を選ぶと、他の証券会社で保有している株式にも自動的に適用される。証券会社ごとに違う方式を選ぶことはできない。2009年1月の株券電子化の際に信託銀行などへ移された「特別口座」に株がある場合は、そもそも利用できないとされている。
取られた分がまるごと消えるわけではない。Q30は、課税された配当金等について確定申告を行えば、総合課税を選んで配当控除を受けるか、申告分離課税を選んで特定口座や一般口座の譲渡損失と損益通算するか、どちらかができるとしている。ただしQ18の注記が釘を刺す。課税となった配当金等を、確定申告によって非課税に戻すことはできない。
非課税を取り戻す道はない。課税されたものを、課税の枠内で調整できるだけだ。
なお、株式投資信託の分配金にこの手続きは要らない。関係するのは個別株・ETF・REITを買った人だけである。
6. 損はないものとされる。だから順番は口座、設定、商品になる
Q29は明快だ。NISA口座の売買損失は税務上ないものとされる。特定口座や一般口座の配当金や売買益との損益通算はできない。3年間の繰越控除もできない。国税庁タックスアンサーNo.1535も、非課税口座で生じた損失はないものとみなされると同じ内容を示している。
利益が出たときだけ効く器である。裏返せば、損が出た局面では課税口座より不利になりうる。
そしてQ22。銀行や郵便局のNISA口座で投資できるのは株式投資信託だけだ。証券会社なら上場株式、ETF、REITも扱える。どこに口座を置いたかで、選べる範囲の上限は先に決まっている。
確かめる順番は、たぶん逆になっている。商品名を検索する前に、自分のNISA口座がどの金融機関にあるか、配当金の受取方式が何に設定されているかを見てほしい。ログインすれば数分で分かる。そこが合っていなければ、どの商品を選んでも結果は変わらない。
7. 指数が二つ増え、債券中心の投信が入る
ここまでの線引きは、固定されたものではない。
金融庁が2025年12月に公表した「令和8(2026)年度税制改正について」には、つみたて投資枠の対象を広げる項目が並んでいる。指定株式指数に読売株価指数とJPXプライム150指数が加わる。一定の株式指数について、他の指定指数との組み合わせを必要とする要件も撤廃される。
もう一つのほうが大きい。指定指数に連動しない公募株式投資信託の要件が、「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」に変わる。金融庁は注記で、リスク許容度が高くない若年層や高齢層が第一歩を踏み出せるよう、債券中心あるいはバランス型の選択肢を増やすための措置だと説明している。
売買手数料ゼロにも例外が入る。定期売却サービスに限り、サービスに通常必要と認められる手数料の徴収が可能になる。取り崩しながら使いたい層に向けたものだ。
各項目がいつから適用されるかは、この資料に明記されていないものもある。時期は取引先の金融機関で確かめてほしい。ただ方向ははっきりしている。いま制度が弾いているものの一部は、これから弾かれなくなる。
除外リストを暗記する意味は薄い。要件がどこに書いてあるかを知っているほうが長持ちする。
ここに書いた要件・税率・本数は、2026年8月時点で公表されている資料に基づく。制度は改正されるし、実際に改正が控えている。個別商品の手数料や約款は目論見書で、口座の設定と適用時期は取引先の金融機関で、それぞれ確認してほしい。
コメント
コメントを投稿
記事をお読みいただきありがとうございます。
ご意見・ご感想・ご質問をお気軽にお寄せください。
※スパム対策のためコメントは管理者承認後に公開されます。
※医療・法律・税務に関する個別相談はお受けできかねますので、専門家にご相談ください。