「もう限界」と言われた夜の、次の朝に

「もう限界」と言われた夜の、次の朝に
「もう限界」と言われた夜の、次の朝に

ゆうべ、すぐ隣にいる人から「もう限界」という言葉を聞いたのなら。その朝にまず浮かぶのは、たぶん「自分がもっとしっかりしなければ」という思いです。けれど、その朝にすべきなのは、気力をかき集めることではありません。むしろ反対で、ひとりで背負ってきた荷物を、今日から自分だけでは持たない――そのために、電話を一本かけることです。介護の相談も、心の疲れの相談も、無料の公的な窓口が、朝のうちに開きます。

1. ひとりで抱えている人は、あなたが思うより多い

ひとりで抱えている人は、あなたが思うより多い

「自分が倒れたら、この家は回らなくなる」。そう感じているのは、あなた一人ではありません。厚生労働省の令和4年国民生活基礎調査をあたると、介護される人と主に介護する人がともに65歳以上、いわゆる老老介護の割合は63.5%にのぼり、初めて6割を超えました。総務省の令和4年就業構造基本調査では、働きながら家族を介護している人は全国で約365万人。それでも、介護や看護を理由にこの一年で仕事を辞めた人が、106千人います。あなたが特別に弱いわけではありません。数字の側が、もうそういう時代になっています。

2. 朝いちばんにかけていい電話地域包括支援センター

朝いちばんにかけていい電話 ― 地域包括支援センター

最初の一本に、地域包括支援センターをおすすめします。厚生労働省の制度として全国すべての市町村に置かれ、おおむね中学校区(人口23万人)に一つ。案外、すぐ近くにあります。社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャーが常駐し、相談は無料です。何を頼めばいいか分からない――その段階のままで、電話してかまいません。要介護認定をまだ受けていなくても、入口はここで開きます。お住まいの市区町村名と「地域包括支援センター」で調べれば、担当の窓口が分かります。

3. 仕事は、たぶん辞めなくていい

仕事は、たぶん辞めなくていい

「介護のために仕事を辞めるしかない」。そう思い詰める前に、知っておいてほしい制度があります。介護休業です。雇用保険法第61条の4にもとづき、対象となる家族一人につき通算93日まで、最大3回に分けて休めます。雇用保険に加入していれば、休業前の賃金のおよそ67%が、介護休業給付金として支払われます(厚生労働省・ハローワークの案内による)。この93日は、介護を抱え込むための時間ではありません。体制を組み立てるための時間です。施設を探し、ケアマネジャーと段取りを決める。その間の暮らしを、国がおよそ三分の二、支えてくれます。

4. 数日だけ、離れていいショートステイという休み方

数日だけ、離れていい ― ショートステイという休み方

介護される本人を、数日だけ施設に預ける方法もあります。介護保険の短期入所生活介護、いわゆるショートステイです。要介護認定を受けていれば、原則として連続30日以内、一泊から利用できます。介助を受けながら泊まれるので、その間あなたは眠れます。介護する人の休息(レスパイト)を目的にした利用も、制度として認められています。手配は、ケアマネジャーや地域包括支援センターを通します。倒れずに続けるための、正規の仕組みです。後ろめたく思う必要は、どこにもありません。

5. 心のほうが先に限界なら

心のほうが先に限界なら

ここまで段取りの話をしてきました。けれど、ゆうべの「もう限界」が、制度や手配では受け止めきれない重さだったのなら。介護の相談より先に、心の相談を置いてください。厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)は、全国どこからかけても、電話をかけた所在地の公的な相談窓口につながります。受付の曜日や時間は地域によって異なりますが、本人のためにも、受け止めて消耗しているあなた自身のためにも、使えます。一人で朝まで持ちこたえる必要は、もうありません。

なお、ここに挙げた給付率や日数、相談窓口の受付時間などは、制度の改定や地域差によって変わることがあります。実際に動くときは、厚生労働省・ハローワーク・お住まいの自治体の最新の案内で、いちど確かめてください。この記事は制度の入口を示すもので、個別のケースごとの判断に代わるものではありません。

電話はどれも、今日かけなくてもかまいません。けれど番号を一つ書きとめておくだけで、次に「もう限界」と聞いた夜の重さは、少し変わります。明日の朝、あなたが一人で立っていなくて済むように。

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