年下男性に愛される50代女性は、何をしていないのか

「年下の夫」はもう特別ではない

人口動態統計でみる妻年上婚の広がり

「年下の夫」はもう特別ではない

「年下の男性に選ばれる五十代の女性には、何か特別な秘訣がある」。雑誌でもネットでも、その手の見出しはよく目に入ります。何をして、何をしていないのか、と。ただ、秘訣の話に入る前に、一度だけ数字に当たっておきたいと思いました。年下の夫を持つ女性は、本当に珍しい少数派なのか。手元に取り寄せたのは、厚生労働省の人口動態統計特殊報告です。婚姻に関する統計を二十年ぶんめくると、思っていたより淡々とした事実が出てきます。先に結論を書きます。「妻が年上」の結婚は、もう特別なことではありません。

1 「妻が年上」の初婚は、いま四組に一組まで来た

「妻が年上」の初婚は、いま四組に一組まで来た

厚生労働省「婚姻に関する統計」(平成二十八年度 人口動態統計特殊報告、平成二十九年一月公表)に、初婚どうしの夫妻の年齢差を都道府県別に集計した表があります(表十五)。その全国の行を見ると、妻が年上の組み合わせは、二〇一五年(平成二十七年)で二四・二%。きっかり四組に一組です。

二十年前と並べると、変化がはっきりします。一九九五年(平成七年)は一八・〇%でした。二十年で六・二ポイント上がっています。地域の差も縮みました。妻が年上の割合が二割を超える都道府県は、一九九五年には七つしかありません。それが二〇一五年には、四十七都道府県のすべてで二割を超えています。表の都道府県の列を上から下までなぞって、一つも二割を下回らないことを確かめました。

年下の夫は、もう一部の地域の、一部の女性に限られた話ではありません。北海道から沖縄まで、どこでも四組に一組という分布になっています。

2 「夫が年上」は二十年で九・四ポイント減った

「夫が年上」は二十年で九・四ポイント減った

同じ表十五は、反対側の動きも教えてくれます。夫が年上の組み合わせは、一九九五年の六四・四%から、二〇一五年の五五・〇%へ。二十年で九・四ポイント下がりました。同い年は一七・六%から二〇・八%へ増えています。

長いあいだ、「夫が年上」が結婚の標準形でした。その標準が、静かに薄まっています。妻が年上が増えたぶん、夫が年上が減った。三つの数字を足すといつも一〇〇になりますから、どこかが増えれば、どこかが必ず減ります。分布の重心が、ゆっくり真ん中へ寄ってきた。そう読むのが正確です。

3 ただし平均の年齢差は、ほとんど動いていない

ただし平均の年齢差は、ほとんど動いていない

ここで一つ、慎重になりたいところがあります。「妻が年上が増えた」ことと、「男女の年齢が逆転した」ことは、別の話です。混同すると数字を読み違えます。

同じ特殊報告の平均婚姻年齢の表(表二)で、夫妻の年齢差(夫から妻を引いた値)の推移をたどると、近年はほぼ横ばいでした。全婚姻で二歳前後。劇的に縮んだわけではありません。増えたのは、分布の端にある「妻が年上」というカテゴリーの割合であって、平均値そのものが引っくり返ったわけではない。ここは冷静に分けて読む必要があります。

ただし、組み合わせを絞ると、別の顔が出てきます。夫妻とも日本人の「夫が初婚・妻が再婚」という型では、平成十二年(二〇〇〇年)以降、平均の年齢差がマイナスに転じています。二〇一五年は、夫の平均婚姻年齢が妻より〇・三歳低い。初婚の男性が、自分より年上の再婚の女性と結ばれる。表の同じ列を昔から順に追うと、この型が二十年以上、平均で見ても安定して存在していることがわかります。

4 五十代に絞ると、再婚はむしろ男性に多い

五十代に絞ると、再婚はむしろ男性に多い

では、五十代の女性に話を戻します。ここで物語と数字が、はっきりずれます。

同じ報告に、離婚した人がその後再婚した割合の表があります(表五)。五十歳以上で離婚した人のうち、五年以内に再婚した割合は、男性が一六・〇%、女性が一〇・八%でした(二〇一一年に離婚した層)。男性のほうが、五ポイント以上高い。五十代以降の再婚は、数の上では男性に偏っています。

「五十代の女性が、年下に愛されて、もう一度結ばれる」。それは、たしかに起きています。ただ、起きやすさの重心は、まだ男性の側にあります。願望が描く絵と、統計の重心は、同じではありません。

5 この数字を、自分の手元でどう使うか

この数字を、自分の手元でどう使うか

ここまでの数字を、もう一度並べてみます。年下の夫は、全国どこでも四組に一組まで広がった。夫が年上は二十年で九・四ポイント減った。けれど平均の年齢差は二歳前後で動かず、五十代に限れば再婚そのものが男性に偏る。四つの事実は、どれも同じ報告の、別々の表から取りました。

この分布を、自分の側にどう引き寄せるか。一つ言えるのは、「特別な少数派かどうか」を心配する必要は、もうないということです。妻年上は四組に一組まで来ています。秘訣を探すより先に、自分がこの分布のどのあたりに立っているのかを見たほうが、たぶん地に足がつきます。

もう一つ、釘を刺しておきます。これは集団の傾向であって、一人ひとりの結末を決める数字ではありません。四組に一組という割合は、裏を返せば、四組に三組はそうでない、ということでもあります。割合は、あなたの選択を予言しません。あくまで、世の中の分布を測る物差しにすぎないのです。

最初の物語に戻ります。「年下に選ばれる女性は、何をしていないのか」。数字は、その問いに直接は答えてくれませんでした。代わりに、別のことを教えてくれます。年下の夫は、もう珍しくない。けれど五十代に限れば、再婚そのものが多数派ではない。そして平均の年齢差は、ほとんど動いていない。秘訣を数える前に、自分が分布のどこにいるかを知る。順番は、たぶんそちらが先です。

(ここで挙げた割合は、夫妻の年齢差を多面的に集計した最新の特殊報告である、二〇一五年(平成二十七年)の値です。毎年公表される人口動態統計では、令和六年(二〇二四年)の平均初婚年齢が夫三十一・一歳・妻二十九・八歳、再婚件数の割合が夫一七・九%・妻一五・六%と公表されています。制度や統計は更新されますので、最新の数値はそのつど一次資料でお確かめください。本稿は公的統計の読み解きであり、個別の結婚や再婚の判断について助言するものではありません。)

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