シニア世代の婚活で「騙された」はなぜ起きるのか ― 契約トラブルと詐欺被害を分けて考える
シニア世代の婚活で「騙された」はなぜ起きるのか
契約トラブルと詐欺被害を分けて考える
「騙された」という同じ一言が、まるで違う二つの出来事を指している。一つは、結婚相談所との契約をめぐる行き違い。もう一つは、知り合った相手に金を送ってしまう詐欺だ。前者には、法律が解約と返金の道を用意している。後者は、ほとんど取り返せない。どちらに足を踏み入れたのかで、打つ手は正反対になる。だから、まず分ける。
1. 結婚相談所と高い契約をした。解約してお金は戻るのか
結婚相手紹介サービスは、契約期間が2か月を超え、支払総額が5万円を超えると、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たる(消費者庁・特定商取引法ガイド)。この型に当てはまれば、契約書面を受け取ってから8日間はクーリング・オフできる。理由は要らない。違約金もない。
8日を過ぎても、中途解約はいつでもできる。事業者が請求できる解約料には、法律で上限がある。サービス開始前なら3万円。開始後は、提供済みの分の対価に、「2万円か契約残額の20%のいずれか低い額」を足した範囲までだ(消費者庁・特定商取引法ガイド/国民生活センター)。契約書に「解約不可」「返金なし」と書いてあっても、それは効かない。法律が優先する。だからまず、契約書の精算条項を開いて、請求された額がこの上限を超えていないかを確かめる。
2. 希望と違う相手ばかりだった。説明と違う。これは詐欺か
多くは、詐欺ではない。サービスの質や説明をめぐる、民事の行き違いだ。腹は立っても、相手はふつう実在の登録事業者である。ただし、事実と違う説明で契約させる勧誘は、特商法違反として契約の取消や行政処分の対象になりうる(消費者庁・特定商取引法ガイド)。だから泣き寝入りする必要はない。最初に向かう窓口は、警察ではなく消費生活センターだ。「騙された気がする」の多くは、こちら側にある。
3. アプリで知り合った相手に送金した。取り戻せるか
これは、別の話になる。恋愛や結婚をちらつかせて金を送らせるのは、SNS型ロマンス詐欺や結婚詐欺と呼ばれる犯罪だ。令和6年の一年で、SNS型投資・ロマンス詐欺は認知1万237件、被害額は約1,272億円に達した。被害は40〜60歳代に集中し、一件あたりの平均は1,200万円を超える(警察庁・令和7年版警察白書)。同じ年の検挙人員は、129人にとどまる。
相手は実在せず、金は海外や他人名義の口座へ流れることが多い。回収は、極めて難しい。これは「いい人だと思ったのに」という後悔ではなく、刑事事件として扱うべき被害だ。
4. 契約トラブルと詐欺は、どこで見分けるのか
線は二本ある。一本は、相手だ。契約書や会社情報のある登録事業者か、それともアプリで知り合っただけの個人か。もう一本は、金の行き先。事業者の口座か、知り合った相手個人の口座や暗号資産か。後者で、しかも投資や送金の話が出てきたら、詐欺を疑う。会ったことがない、海外にいる、写真と本人が一致しない。どれか一つでも当てはまれば、立ち止まったほうがいい。
5. どこに、どの順で相談すればいいか
契約や解約、返金の話なら、消費者ホットライン188。最寄りの消費生活センターにつながり、相談は無料だ。だまし取られた疑いがあるなら、警察相談専用電話#9110。送金した直後なら、振込先の銀行にもすぐ連絡する。組戻しが間に合えば、止められることがある。消費者庁も、この188と#9110をあわせて案内している。なお、ここで挙げた制度や金額は2026年6月時点のもので、自分のケースに当てはまるかどうかは、最終的に窓口で確かめてほしい。
「騙された」と感じたら、相手を問い詰める前に、まず受話器を取る。契約の話なら188、送ってしまった金の話なら#9110。一人で抱え込まないことだ。
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