子どもが結婚しない、孫が見られない親のための心の整理術

 

子どもが結婚しない、孫が見られない親のための心の整理術心の整理術

50歳で一度も結婚していない男性は、3.5人に1人。その寂しさを、どこに置き直すか

年末、親戚が集まる席で、話題はいつのまにか誰かの子どもや孫のことになる。年賀状の片隅に「初孫が生まれました」と一行だけ書き添えられている。あなたは笑って相づちを打ちながら、胸の奥が少しだけ冷たくなるのを感じたことはないでしょうか。自分の子どもには、その気配がない。結婚も、その先も。

口に出せば身勝手に聞こえそうで、誰にも言えない。そういう寂しさを、あなたは長いあいだ一人で抱えてきたのかもしれません。

先に、ひとつだけ数字をお伝えします。私自身、にわかには信じられず、国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2025年版)」を取り寄せて表をひらいてみました。2020年に50歳で一度も結婚していない人の割合は、男性28.25%、女性17.81%。男性のおよそ3.5人に1人、女性の5.6人に1人にあたります。これは、あなたの家だけに起きていることではありません。

「これは、私の育て方が悪かったからなのでしょうか」私の育て方

夜、ふとそう考えてしまう日があるかもしれません。あのとき、もっとこうしていれば、と。

けれど、同じ資料集で数字の動きを五年ごとに並べてみると、それは一人の親の育て方で説明できる話ではないようです。50歳時の未婚割合は、男性で見ると2015年の24.77%から2020年の28.25%へ、わずか五年で3ポイント以上上がっています。日本人の平均初婚年齢も、2023年で夫31.1歳、妻29.7歳。1990年の夫28.4歳・妻25.9歳と引き算すると、夫で2.7歳、妻で3.8歳も遅くなった計算になります(厚生労働省「令和5年人口動態統計月報年計」、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」)

これは、ある家庭の食卓で起きたことではなく、雇用や収入や価値観といった社会全体の地殻変動が動かしている数字です。あなたの子どもは、その大きな流れの中にいる一人にすぎません。育て方の答え合わせをする場所に、この寂しさを置かないでほしいのです。

「どうして、うちだけ──そう思ってしまう日があります」

どうして、うちだけ

そう感じてしまう理由のひとつは、見えているものに偏りがあるからかもしれません。孫の写真を見せてくれる人の声は大きく、よく届きます。けれど「うちの子は結婚しなくてね」と自分から切り出す人は、そう多くない。黙っているだけで、同じ思いの同世代は、あなたのまわりにも静かにいるはずです。

数字もそれを裏づけます。厚生労働省が20259月に確定値を公表した「令和6年人口動態統計(確定数)」によれば、2024年の出生数は686,173人。統計を取りはじめてから初めて、70万人を割り込みました。一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.15で、これも過去最低です。婚姻の件数そのものも、令和5年で474,717組まで減っています(いずれも同確定数による)。孫のいる家のほうが当たり前、という時代は、もう静かに過ぎつつあるのです。うちだけ、ではありません。みな、口にしないだけで。

「それとなく、結婚や孫のことを口にしてもいいのでしょうか」

結婚や孫のこと

ここは、少し慎重に考えたいところです。

期待を言葉にすればするほど、子どもはその話題から距離を取りやすくなります。悪気のない一言が、「実家に帰ると結婚の話をされる」という記憶になって積もっていく。そうなると、本当に守りたかったもの──いま手元にある、子どもとの関係そのもの──のほうが先に細くなってしまうことがあります。

孫は、あなたの人生にあらかじめ約束されたものではありません。けれど、子どもとの関係は、まだあなたの手の中にある。どちらを大切にしたいか。そう問い直してみると、言いたい言葉を飲み込む日があってもいいのだと、少し肩の力が抜けるかもしれません。

「思い描いていた『孫を抱く自分』は、どこへやればいいのでしょう」

『孫を抱く自分』

これは、れっきとした喪失だと思います。

誰かが亡くなったわけではない。だから周りも気づかないし、あなた自身も「こんなことで」と、悲しむことを自分に許せずにいる。けれど、誰かを亡くしたときと同じように、来るはずだった未来や、抱くはずだった役割を、人は静かに悼むことがあります。それは立派な悲しみです。声に出して悼んでいい。まずは、そこから始めていいのだと思います。

そのうえで、いつかでかまいませんから、その時間とまなざしの行き先を、少しずつ自分のほうへ戻してみてください。孫に注ぐはずだったものを、子どもへの催促にではなく、あなた自身の後半生に置き直す。長く後回しにしてきた学び直しでも、いつか行きたかった場所への旅でも、近所の誰かとの小さなつながりでも。空いた場所は、急がなくても、別の何かでゆっくり埋まっていきます。

「この寂しさは、いつか消えるのでしょうか」

この寂しさ

正直に申し上げれば、きれいに消えるとは限りません。

ふとした拍子に、また顔を出すこともあるでしょう。それでも、寂しさは少しずつ小さく、静かになっていきます。日々の楽しみと同じ部屋に、並べて置いておけるくらいの大きさに。消そうと力むのではなく、共に暮らせるところまで連れていく。それで十分なのだと思います。

ただ、もし眠れない夜が続いたり、気持ちが重く沈んだまま戻らないようなら、どうか一人で抱え込まないでください。かかりつけの医師や、お住まいの市区町村の窓口のほか、厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)に電話をかけると、その地域の公的な相談機関につながります。ここに書いたのは一般的な情報で、心身の不調は人それぞれです。誰かに話してみることは、立派な心の整理のひとつです。

次の年も、年賀状の「初孫」の文字を目にする日が来るでしょう。親戚の集まりで、孫の話に相づちを打つ日も、また巡ってくる。

そのとき、同じ場面でも、あなたの胸の中の置き場所が、少しだけ変わっているといい。寂しさは消えていなくてかまいません。ただ、その隣に、あなた自身のこれからが、ちゃんと腰かけていますように。

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