二世帯住宅の費用と名義を、住み始める前に詰めておく

二世帯住宅の費用と名義を、住み始める前に詰めておく

二世帯住宅の費用と名義を、住み始める前に詰めておく

出資と持分のずれ、区分登記、連帯債務の負担割合——後から税で効いてくる分かれ道

二世帯住宅がうまく続くかどうかは、親子の相性や生活時間の違いで語られがちです。けれど国税庁のタックスアンサーを番号順に当たっていくと、後から金額の大きな争いになる部分の多くは、性格ではなく「誰がいくら出したか」と「登記の名義をどう書いたか」のずれに行き着きます。出した金額、それを持分にどう反映したか、建物の登記をどの形にしたか。この三つは住み始めると直しにくく、しかも数年後、相続税や贈与税の具体的な金額になって返ってきます。だから家を建てる前、あるいは買う前に、紙の上で決めておく値打ちがあります。以下は税法上の事実関係に絞って整理しました。個別の判断は最終的に税理士や所轄の税務署に、登記は法務局に確認する前提で読んでください。

1. 出したお金と登記の持分がずれると、差額が贈与とみなされる

出したお金と登記の持分がずれると、差額が贈与とみなされる

国税庁のタックスアンサーNo.4411「共働きの夫婦が住宅を買ったとき」は、資金の負担割合に応じて所有権を登記していれば贈与税の問題は生じない、と明記しています。裏を返せば、出した金額と登記上の持分がずれた瞬間に、その差は贈与として扱われ得ます。この考え方は夫婦に限りません。親子で二世帯住宅を建てる場合にも、複数の税務解説が同じ原則を当てはめて整理しています。

具体的な数字で追ってみます。建築費4,000万円を、親が2,400万円、子が1,600万円出したとします。負担割合は親が5分の3、子が5分の2です。ここで登記を「親2分の1・子2分の1」にすると、子は1,600万円しか出していないのに、4,000万円の半分にあたる2,000万円分の建物を取得したことになります。差額の400万円は、親から子への贈与とみなされます。暦年課税の基礎控除は年110万円ですから、これを超える290万円が贈与税の課税対象です。出資の内訳をそのまま持分に落とすだけで、避けられたはずの税金です。

持分は感覚で決めず、振込の記録や住宅ローンの契約書に紐づけ、出した金額の比率どおりに登記する。すべての起点はここにあります。

2. 親の家に子が増築する形なら、持分を移してから建てる

親の家に子が増築する形なら、持分を移してから建てる

二世帯化のもう一つの典型は、親名義の既存の家に子の資金で増築する形です。ここに見落としやすい論点があります。建物を増築すると、誰が資金を出したかにかかわらず、その価値の増加分はいったん建物の所有者である親に取り込まれます。国税庁のタックスアンサーNo.4557「親名義の建物に子供が増築したとき」は、この場合に親が子へ対価を支払わなければ、親は子から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税される、としています。子がお金を出しても、登記をそのままにすれば、子が出した分は親への贈与とみなされ得るということです。

同じNo.4557は、回避の道筋もはっきり示しています。子が支払った増築資金に相当する建物の持分を、親から子へ移転して共有とすれば、贈与税は課税されません。ただし注意が要ります。この持分移転は親から子への譲渡にあたり、譲渡益が出れば親に譲渡所得の課税が生じます。さらに、共有とするための譲渡であり、かつ親子間の譲渡であることから、居住用財産を譲渡したときの特例は使えない、とも同じ項目が明示しています。

増築は工事だけで完結せず、登記の付け替えまでが一続きの作業だということです。工務店との打ち合わせと同じ熱量で、誰の名義をどう動かすかを先に決めておく必要があります。

3. 区分登記にした二世帯は、相続のとき土地の8割引きから外れる

区分登記にした二世帯は、相続のとき土地の8割引きから外れる

登記の形が最も大きな金額差になって表れるのは、相続のときの小規模宅地等の特例です。国税庁のタックスアンサーNo.4124は、被相続人の自宅の土地のうち特定居住用宅地等に当たる部分について、330平方メートルまで評価額を80パーセント減額できる、と定めています。自宅の土地が遺産の大きな割合を占める家庭では、これが使えるかどうかで相続税が大きく変わります。

二世帯住宅では、この特例の可否が登記の入れ方一つで決まります。No.4124の注記は、被相続人が住んでいた一棟の建物のうち、建物の区分所有等に関する法律第1条に該当する建物——つまり区分所有建物である旨の登記がされた建物——を特例の対象から除く、としています。かみ砕くと、玄関が別で内部を行き来できない完全分離型であっても、親の単独名義あるいは親子の共有で一棟として登記されていれば、子は同居親族として扱われ、特例を使えます。反対に、1階を親名義、2階を子名義のように住戸ごとに分けて登記する区分所有登記にすると、子の居住部分には特例が及びません。

取り違えやすいのが、共有登記と区分登記の違いです。共有は一つの建物を複数人が持分で分け合う形、区分は二つの独立した住戸をそれぞれが所有する形です。同じ二世帯でも、前者は特例の対象になり、後者は外れます。建てる前にどちらにするかを決めておかないと、相続の段になって区分登記を解消する必要が生じ、持分の交換や区分建物の合併といった別の登記手続きと、それに伴う税の検討を迫られます。

4. 連帯債務で借りるなら、誰がいくら返すかを先に書面にする

連帯債務で借りるなら、誰がいくら返すかを先に書面にする

資金計画で住宅ローンを連帯債務で組む二世帯も多いはずです。連帯債務は、契約上は全員が全額の返済義務を負う形ですが、税の扱いは内部の負担割合で決まります。国税庁の質疑応答事例「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象になる借入金の額が、当事者間で負担をどう取り決めたかによって変わる、と説明しています。一方が他方に代わって負担する借入金は、その人からの贈与になる、とも踏み込んでいます。

同じ事例が挙げる数字でたどると、輪郭がはっきりします。家屋等の持分を二人で半分ずつとし、4,000万円の借入を一方が6割・他方が4割負担すると取り決めた場合、負担の多い側が背負う借入は2,400万円です。ところが、自分の持分(半分)を取得するために必要な借入は2,000万円にすぎません。差額の400万円は、その人がもう一方の持分取得のために肩代わりした借入とみなされ、住宅ローン控除の対象になる借入金は2,000万円までに絞られます。負担を取り決める段階で持分と噛み合わせておかないと、控除できたはずの枠が削られ、肩代わり分は贈与の論点として残るわけです。

要するに、連帯債務は「二人で借りた」で終わらせず、それぞれが実際にいくら返すのかを、収入や持分と整合する形で先に文書にしておく。そこを曖昧にしたまま返済を進めると、片方がもう片方の分を肩代わりした、と見られて贈与税の論点が生じかねません。

ここまで挙げてきた点は、いずれも住み始めてからでは直しにくく、直すには別の税やコストがついて回るものばかりです。逆に言えば、着工や契約の前なら、紙とペンで片がつきます。出資の内訳、その比率どおりの持分、建物の登記の形(親の単独か、親子の共有か、住戸ごとの区分か)、そして連帯債務にするなら各自の返済負担。これらを一枚の紙に書き出し、法務局で登記事項証明書の取り方を確かめ、判断に迷う数字だけを税理士か所轄の税務署に当てる。なお、ここで挙げた制度の内容は本稿の執筆時点で国税庁の資料に当たって確認したものですが、税制も特例の要件も改正されます。実際に動く前に、自分のケースの数字で最新の取り扱いを確かめてください。同居の摩擦をすべて消すことはできませんが、お金と名義のずれという、後から最も高くつく火種は、ここでかなり減らせます。


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